窓ぎわのトットちゃん。
母が買って自宅の本棚にあり、小学生のときになんとなく読みました。
そんなに字も小さくなくて、内容もおもしろくてあっという間に読み切った記憶があります。
読んでから何十年も経っていますが、いわさきちひろさんの表紙の絵と、授業中にチンドン屋さんを呼び込んだりじっとしていられなくて小学校を退学させられたエピソード、教室が電車の車両だったこと、海のものと山のものをお弁当に入れる決まりは覚えていました。
あの本を映画化するなら観たいなぁと思ったのと、学校が苦手な我が子にはトモエ学園はどんなふうに写るだろうと思い、子どもたちを誘って観てきました。
*以下、ネタバレ満載なのでご注意ください*
子どもと向き合う
『席について先生の話を静かに聞いて学ぶ』という学習スタイルからはみ出してしまう、その型にはまらないくらい豊かな個性があふれだす子どもたちを迎え入れるトモエ学園。
冒頭から泣かされたのが、トットちゃんの話したいことを一切さえぎることなくうんうんとうなずきながら何時間も聞き続けるトモエ学園の小林先生の姿。
話題の方向があっちこっちに行って、筋道が通っていなくて、頭に思い浮かんだ『話したいこと』をポンポンと口にしているトットちゃんが、次女とそっくりで。
全部話したいことを話しきって、もう話したいことはないかい?と小林先生が聞いたときにトットちゃんからポツリと出てきた言葉と、
「きみは 本当は いい子なんだよ」
と返す小林先生に、涙が止まらなかったです。
私は次女が満足するまで次女の話を聞けてるだろうか。
脈絡のない話にイラッとしたり、さえぎったり、
「これってこういうこと?」
と話をまとめてみたり。
あーもう全然ダメ、全然次女の話を聞けてない。
家に帰ってきても、
何時までに宿題終わらせなきゃ習い事が始まる
早く夕食を作らないと
早く食べ終わらないと
早く寝ないと
とせかしてばっかり。
次女の話を聞くどころか、
次女のマイペースに合わせていたらあっという間に日が暮れてしまうわ!
私の体力持たないわ!
という気持ちになって
のんびりしてないでー
早く食べてー
おかーさん早く片付けて休みたいー
とまるで次女が私の邪魔をしているかのような声かけ。
次女はきっともっとたくさん私に話を聞いて欲しいはずなのに、私は次女の話をじっくりと聞く時間を作れていなかったと反省、反省、ひたすらに反省。
その子が学びたいことをその子が選ぶ。
やりたいことがあったら、大人が困ったなぁと思うような出来事でも止めない。
ただ、責任をもって始末をさせる。
その経験を通して子ども自身学ぶことがある。
子どもの学びたいことが満足にできるように、大人は子どもにはない経験や知恵を絞って環境を整える。
そんな、子どもたちに対する小林先生の姿勢が描かれています。
映像を観ながら、我が家の日常の一コマ一コマと次女への申し訳なさと反省がどんどん湧き出てきて、私は始終泣いてました。
*投稿1時間後に追記*
なんだか反省ばかりで観るのが辛かったんじゃ?みたいな感じで締めているのが気になって追記。
日頃の育児を反省しつつも、ああこんなふうに子どもに接すると子どもの良さをもっと伸ばせてあげられるのかもしれないと、今後目指したい方向がなんとなく見えてきました。小林先生という1人のロールモデルを知れたことはよかった。
どこまで実践できるかはわからないけど、子どもと話すときには脳内で小林先生の聞き方を再生しておきたい。
戦争
トモエ学園の教育を通して子育て論・教育論を問いかけるのが今回のメインだろうと思って観ていたのですが、それだけではなく、トットちゃんの目線で描かれた戦争へ向かう日本の暮らしや人の変化が、幼稚園~小学生低学年の子供でもわかりやすく描かれています。
私は、幼少期に『火垂るの墓』を観たのですが、当時最後まで観るのがとにかくつらくて、怖かった思い出があります。
「戦争は怖い。
戦争が二度とありませんように。」
と強く心に残る映画であったことは間違いありません。
でも戦争の描写を直視するのがつらすぎて、今も観れる自信が正直ありません。
戦争はするべきではないと子どもに知ってもらうために観て欲しい映画だとは思うのですが、子どもに「いっしょに観よう」と誘えないんです。
トットちゃんの映画での描写は、
・いつものお洋服でおでかけしたらおまわりさんに「服装が華美だ」と詰め寄られる
・後半になるにつれてトットちゃんやみんなの服が地味で質素に
・お弁当が炒り大豆だけ
・よく噛めよ~と空腹を紛らわすために歌っていたらたまたま近くにいた知らない大人に卑しいと叱られる
・大好きなトモエ学園のみんなとサヨナラしないといけない理由が戦争の疎開
・戦争の爆弾でトモエ学園がなくなってしまった
・戦争で人が傷を負ったり死んでしまうという描写は、遺骨を持っていたり杖をついた軍服の人が歩いていたりという間接的な描かれ方で、ほんの数分
・戦争とはちがう形の、いきものの生と死に関するエピソードがある
私が幼少期に観た火垂るの墓よりは戦争描写がマイルド、だけど戦争になるとこんな風に人も生活も変わっていくんだということがしっかり伝わる内容でした。
『この世界の片隅に』も戦争を知るのに観やすい作品(という表現が適切かはわかりませんが私自身がもう一度観ようと思える作品です)と思っていましたが、トットちゃんは小さいお子さんが戦争を知る今後の定番映画になるのではと個人的に感じています。
小3次女に感想を聞いたときに「戦争はいやだ」という言葉がまず出てきたので、それが伝わったのなら観てよかったと思いました。
冬休みに入ったこともあって、我が家と同じように小学生中学生のお子さん(女の子が多かった)とお母さんの組み合わせてきているお客さんがたくさんいて、ほぼ満席。
大人はもちろん、終演して会場が明るくなっても涙が止まらないお子さんや、鼻をすすりながら帰っていくお子さんも。
悲しいだけの涙ではなくて、
これから前向きに生きたいと思える映画でした。
映画の中で黒柳さんのナレーションが聞こえると「ああこれは黒柳さんが経験したお話なんだよなぁ」と実感し、トットちゃんの映画の先にある今現在の黒柳さんがつながることでさらに感動が増しました。
黒柳さんがお元気なうちに映画化されてよかったです。
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