わたしの実家は決して裕福ではなかったけれど、
奨学金を2つ借りてなんとか他県の大学に通えていました。
パソコンなんて持っていなかったし、
パソコン操作も大学入学後に初めて習ったので、
入学して数か月のあいだ提出するレポートはすべてレポート用紙に手書き。
大学のパソコンをさわっているうちに次第にタイピングが早くなってきて
「パソコンがあると断然早く仕上がる。
家でパソコンが使えたらめっちゃ楽なのに。」
と思い始めたものの、
生活費と学費を捻出するだけでも大変な状況と理解していたので、
親に「買って!」とねだるわけにはいかず。
自分でパソコンを買うべくバイトでこつこつ資金を貯めていきました。
近所の大きめの家電量販店に足しげく通い、
欲しいパソコンと値段とをにらめっこ。
あと〇万円だから、〇月には買えそうだ。
バイト料が入ったら『パソコン代』と走り書きした茶封筒にいくらか封入。
封筒の中のお札を数え、買える日を待ち遠しく思いながらせっせとバイトに励みました。
ようやく貯金がパソコン代に到達した日。
間違いがないか何度もお札を数え直し、パソコン代が入った茶封筒をバッグに入れて、いつもの家電量販店へ。
自分ひとりで数万円単位の買い物をするなんて人生初だったので心臓はバクバク。
お店に入る前にもう一度バッグの中の茶封筒を確認し、
「ぜったいお金足りる!
だいじょうぶ!」
と意を決して売り場へ向かいました。
ミポリンがCMをしていたLaVieのノートパソコンの前に立ち、値段が変わりないことを最終確認。
「これください!」
と売り場近くにいた店員のおじさんに申し出ました。
当時のわたしは、身長が低いうえに着ているものはUNIQLOのフリースにジーンズと、まるで中学生みたいな風貌。
冷やかしじゃないことをアピールするために、
「ちゃんとお金はあります!」
と店員のおじさんにパソコン代の入った封筒をみせたんです。
そしたら、おじさんは少し考えて
「…来週になったらこの商品は値下がりするから、また来週おいで。」
と。
「えっ!そうなんですか!
安く買えるなんてありがたいです!
また来ます!」
お礼を言ってその日は買わずに帰宅。
次の週に、数万円ほど値下げされたパソコンを無事購入することができたのでした。
学生時代の数万円って大金ですから。
めっちゃいいおじさんやったわ!
と友達とキャーキャー盛り上がりました。
値下げしたあとに買われるなんて、
どう考えてもお店側の損失じゃないですか。
しかも広告を打ち出す前の値下げ情報を一個人のお客に漏らすなんて、絶対ダメですよね。
買う前に何度も売り場に行っていたので、おじさんはわたしのことを知っていたのかも。
必死な形相でお金を握りしめてパソコンを買いに来た子をかわいそうに思ったのかも。
もしかしたらおじさんにはわたしと同年代のお子さんがいて姿を重ねていたのかも。
なんていろいろ想像してみますが真相はわかりません。
お店のルールや損得じゃなく、
あれは人対人の温かいお買い物だったよなあ。
25年以上経った今でも覚えているエピソードです。
ちなみに、パソコンを安く買えた!と一緒に盛り上がった友達2人が、後日同じお店でパソコンを購入しました。
おじさんの優しさへの感謝の気持ちが、
少しでもお店の売上に貢献できていたらいいなと思います。
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